がんばれ星河ちゃん~地球侵略していたはずなのに転落人生~

「ん~~~~!おいC~~~!」

宇宙に浮かぶ衛星…月。
地球からは見ることのできない、裏ッ側のとある場所。一”匹”の宇宙人がうさ耳をパタつかせながら、黄色いパッケージのアイスを1匙食べていた。

「やっぱ地球のアイスで一番おいしいのはこれだわぁ…。すっぱくてしゃりしゃりの、地球の果実の輪切りがのってるヤツ!
凍っている食べ物は宇宙人の体に毒だとはわかっていても、やめらんないんだよねぇ~…」
もうひとすくいした、スプーンの上をうっとりと眺めて、はぐっと大きな口でそれを味わう。瞬間。キーンとした頭痛が宇宙人を襲い、顔をしかめる。
宇宙人にとって、冷たいアイスは天敵なのである。一度に摂取しても良いとされているのは、たった2口だけ…

それでも…その味は、格別だった。

「もう一口だけ…食べちゃってもいいかな…?」


***
星河テフ( @Hoshi_Tefu)が主人公のリレー小説です。

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「いっただっきまーす!」

 宇宙人はわき目も振らずに匙で氷菓をすくう。果実の輪切りは既に宇宙人の腹の中、キンッキンに冷えてるであろうそれを先に食べてしまったのも良くなかったのかもしれない。

「ゔッ……あたまが……」

 禁断の三口目を唇にあてた瞬間の事だった。
 宇宙人を襲っていた微かなアイスクリーム頭痛が加速し、増長し、浸食して頭全体を襲い始めたのだ。
 ジーン、という痛みではなく、脳みそがかき混ぜられるような痛み。

「ママ河……パパ河……ぴくちゃん……巨乳ちゃん……いままでありがとう」 

それが一匹の宇宙人の遺言だった。

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星河はバーチャル宇宙人、星河テフ!!
幼なじみで同級生のぴくちゃんとサクレを食べて・・・
黒ずくめのサクレの怪しげな取引現場を目撃した!!
サクレを食べるのに夢中になっていた星河は・・・
背後から近づいて来るもう一口のサクレに気づかなかった・・・
星河はそのサクレにサクレを食べさせられ、目が覚めたら・・・

体が地球人になってしまっていた!!

地球人になっても頭脳は同じ!
迷宮ばかりの宇宙人!!

サクレは一日二口まで!!

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すると突然、うさ耳が4つに増殖したのである。

本来触覚として頭についているそれは頭痛を消し去る代わりに、本数を倍にしてしまった。
同時に頭にのしかかる1個5キロのうさ耳2セットの重み。

「な、な、なんじゃあこりゃあ!!!」

あまりの出来事にいつもの可愛らしい声とは真逆のふとましい悲鳴を上げる。

宇宙人にとって「4つ耳」は禁忌とされている。
彼女は宇宙人がアイスを二口しか食べてはいけないと言い聞かされてきた理由が分かった気がした。

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新しく生えた耳を触るとしっかりと触られた感触もある!

「うわぁっ!」

いつもと違う4つ耳に驚き思わず立ち上がったがあまりの重さに尻餅をついてしまった。

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大きな音に、隣の部屋にいた妹が駆けつけてきた。

「どうした!姉!大丈夫か!」
「うぅ...巨乳ちゃん...」
「そのあだ名やめろ!というか頭のそれ...まさか...」
「うん...我慢できなくて...」
「だからやめておけと言ったんだ!」
「ごめんねぇ...お夕飯はちゃんと残さず食べるから許してぇ...」
「そういう問題じゃないだろ!家から追い出され...胸に触るな!」

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「こんなの星河じゃない!」

怒りに任せて4つ耳のうち2本をひきちぎる。(1本398円で好評発売中)
アイスクリーム頭痛も相まってどっと疲れた気がする。
なんだか頭が重いような・・・。

「姉・・・また増えてる・・・」

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あれから長い年月が経った。
何本の耳が生え、何本の耳を売り歩いただろうか。
一度食べたサクレの味を忘れる事など出来ず
星河は何度もサクレを食べ、その度に耳を増やした。
「サクレおいしー!」

そして前触れもなく

その事件は起こった。

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いつものようにアイスを口に含んだその瞬間

今までのサイズの倍以上の巨大な耳が生えたのである。
今までの物よりもはるかに重い。

宇宙人は重さで床に勢いよくヘドバンをぶち当てた。

当然、床には穴が空いた。

何かが爆発する音が聞こえ、宇宙船が大きく傾いた。
なんか部屋の電飾も赤色に明滅を繰り返している。

床に突き刺さった状態の宇宙人は思った。
「しぬのでは?」

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「もうあれをやるしかないわぁ!」
目を閉じ深く息を吸い込み全身を集中させる!

この技持っていくつも困難を乗り越えてきた!

究極にて最終奥義!
今、世界が震えだす!

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「超スーパーハイパーマスターウルトラアルティメットビッグバンジャイアントデリケートアグレッシブめっちゃ凄いウーバーイーt
『どごおおおおおおおん』

技名を言い終わる前に宇宙船が木っ端微塵になった。

果たして宇宙人は無事なのか!?

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??????『ミカクニンのウチュウセンのザンガイをハッケン...』
『セイタイハンノウをカクニン...タダチニキュウジョします...』
偶然地球付近を観光していた形容し難い紫色のスライムのような宇宙人が星河を救助した。

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目を覚ますと、見知らぬ天井。
ゆっくりと身を起こす。
どうやら気を失っている間にベッドに運び込まれたようだ。

「気がついた?」
「誰!?」

声が聞こえたほうを振り向くとそこにいたのは……。

***
繋げられそうだったので、ゆめじさんのページをそのまま繋げました!

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隣に住んでるおじさん(通称:隣おじ)だった。
ひえ。
思わず叫びそうになった。
いや、少し口から漏れていたかもしれない。
無理もないだろう、目覚めた時に隣おじが私の病室に居たのだから。
けっして隣おじが悪い訳では無い。
ただそこに隣おじが居た事に驚いたのだ。

「事故当時の記憶はあるか?」
そう隣おじが聞いてきた。
事故当時の記憶はある。
ただそれ以上に、何で隣おじが私の病室にいるのかの方が理解できずにしどろもどろしてしまった。
「まぁ、しょうがない。あんな大きな事故だ。記憶の整理も付かないだろう。」
彼は眉をしかめながら手に持っていた資料(多分カルテだろう。)
そこに何かを書き綴りながらそう語りかける。
ペンが紙に擦れる音、それ絵描きとしては心地の良い音だった。
しかし、そんな安らぎはすぐに消え去っる事になる。

まさか突如としてあんな事が起こるなんて……


「失礼します」
突然、ガチャリと病室の扉が開く。
しっかりとスーツを着込んだ真面目な顔のうさぎたち(身長約30cm)が、ぞろぞろと部屋に押し入ってくる。
「ちょっと!ここは病室ですよ!」
思わず立ち上がりそうになった隣のおじさんを、そばにいたうさぎが宥める。

「お休みのところ突然申し訳ありません。私たちは月政府のものです。」
背筋をピンと伸ばした一匹の偉そうなうさぎが星河のもとへ歩み寄る。器用なことに耳をつかって名刺を差し出している。

「単刀直入に言います。匿名で、地球製のアイスを食べて大変な目にあった人物がいるという情報がありました。
 これは月の生命体の命を狙った地球からのテロ…いや、宣戦布告の可能性があります。
 そこで提案なのですが、月人としては稀有なことに地球人の見た目に近しい星河ちゃん様に、地球潜入ミッションを実行していただきたいのです。」

国(星)が今…動き出す…

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「え、いや、まだやるとは言ってないよ...」
「ちなみにですが、お断り頂いた場合あなたの妹さんは凶悪な宇宙怪獣カナボコの餌になります。」
なんと、巨乳ちゃんが人質として捉えられていたのだ。
「もちろん断って頂いても我々は一向に構いませんが...」
うさぎの朗らかで優しい口調がより一層恐怖を増幅させた。

「政府だかなんだか知らねぇが、いきなり入ってきて脅迫とは穏やかじゃねぇな。」
隣のおじさんが立ち上がろうとするも。

「おじさんはちょっと静かにしていてください。」
いつの間に後ろに回り込んだのか、1匹のうさぎがおじさんの首にスタンガンを押し当てる。
おじさんは呆気なく床に倒れ込んだ。

「さてと、改めてお聞き致しましょう。我々に力を貸して頂けますか?」

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それからはあれよあれよとあっという間に事は進んでいき、ついに出発当日となった。

『発射予定まで残り10分です。作業員は退去してください。』
国支給の宇宙船の中で星河は発射アナウンスを聞いていた。この宇宙船は国家予算をつぎ込んだ『次世代型長期間調査用宇宙船HTK』と言うらしい。迷彩機能はもちろん、物質スキャナー、長距離瞬間通信アンテナ、反物質リアクターエンジンと高性能であり、年単位で生活できる居住スペースも付いているのだ。

テフ「なんでこんな事に…。うぅ〜、緊張する〜。」
イフ「しっかりしなさいよ。国の今後を左右する大事な任務なのよ!」
テフ「そうは言っても…。でもイフちゃんが一緒に来てくれてお姉ちゃん嬉しいよ!イフちゃんと一緒なら何とかなりそうな気がする!」
イフ「まったく、姉は私が居ないとダメなんだから。」

『発射まで残り5秒…4…3…2…1…発射します。』


調味料さんの投稿

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遂に地球へ向かい始めた星河てふと巨乳ちゃん。
ひょんなことから始まってしまった、月と地球の未来を賭けた潜入任務の行方とは...
また星河を助けた宇宙人の正体は何者なのか!?
次回、頑張れ星河ちゃん〜地球侵略していたはずなのに転落人生〜

『サクレ製造中工場稼働中』お楽しみに!

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サクレ工場へ向かう車の中にテフたち一行の姿があった。

「これよりミッションの概要を説明する」

そう隣おじが言いテフたちは黙ってそれを聞いている。

「今回の目標はサクレ製造レシピの確保またはコピーである」
「お前たちにはこれよりコードネームでやり取りをしてもらう」

そう言ってテフとイフを指差し

「貴様はバニー、そしてお前はボインだ!」
「ちょっ」

とイフが抗議の声を挙げるが

「異論は認めん!」

と一蹴し隣おじが親指を自分に向けて

「そして俺がボスだ!」

とムカつくほどのドヤ顔した!

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