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堀 真潮

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窓際一番後ろの席
窓際一番後ろの席
# ホラー
堀 真潮
閲覧数 6590 いいね数 16 コメント数 2
 窓際の一番後ろの席、そこにカヤノさんが座っている。  先月、突然亡くなったカヤノさんだ。  元々持病があったのだと、その時初めて知った。  カヤノさんは、生前の姿そのままで花の飾られた机に静かに座っている。  本当は生きているんじゃないかと思う事もあるけれど、彼女の横顔を透かして揺れるカーテンが見えたりすると「ああ、やっぱり死んでるんだな」と思う。  退屈な午後の授業、眠りを誘う先生の声を聴きながら、廊下側二列目一番後ろの席から、僕はカヤノさんを眺める。  カヤノさんが現れるのは授業中だけ。見えているのは僕だけらしい。  らしいというのは、見えていない振りをしている人がいるかも知れないからだ。  僕と同じように。    そして、カヤノさんは、ある人をじっと見ている。  窓際から二列目、前から二番目の席。  口元に微かな笑みを浮かべて、そこに座る人の背中をずっと見つめている。
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船の娘
船の娘
# ショート×2
堀 真潮
閲覧数 7483 いいね数 8 コメント数 3
 私は船で生まれた。  両親は、小さな宇宙船で他の星を回って、地球で仕入れた細々とした物を売る星間行商人で、宇宙船が私の家だった。  幼い頃の私は、この生活が嫌ではなかった。  いろいろな星を巡って珍しい物を見るのが楽しかったし、どの星の子供ともすぐに仲良くなれた。  宇宙中に友達がいた。  おかしいと気付いたのは、久しぶりに地球の友達に会った時だ。  以前は二人とも同じくらいの背格好で、好きな物も同じで、一緒に駆け回る事ができた。  いまや彼女は女性で、私だけが少女のまま。  踵の高い靴を履いた彼女は、もう理由なく走ったりしない。   「どうして?」  私は両親に聞いた。  星間航行は光速に近い速度で移動する。そのため、地上よりも時間の進みが遅いのだと彼らは言った。  突き付けられた残酷な現実に私は泣いた。 「皆と一緒に大人にはなれないの?」  私が聞くと、両親は静かに微笑んだ。
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夜中の客
夜中の客
# ショート×2
堀 真潮
閲覧数 9070 いいね数 13 コメント数 1
 月のない夜の事である  炭焼きを生業とする男の小屋の戸を叩くものがあった。  山の中の一軒家である。もしや道に迷った猟師か木こりだろうかと、男は戸を開けた。  そこに立っていたのは十ばかりの娘と、弟と思われる幼子だった。 「一晩泊めていただけませんか」  娘は静かな声で言った。  こんな真夜中に子供二人が山の中にいるなんて、さては妖の類かとも思ったが、疲れ果てた姿がどうにも憐れで、男は二人を小屋に入れると、明日の分に取っておいた飯を雑炊にして食わせた。  子供はすっかり汚れていたけれど、着物は上等な物で、顔つきもどこか品が良い。  雑炊を食べ終わると、二人はきちんと座り直して男に告げた。

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