最強魔法少女はストレスと共に

 太陽は当の昔に沈み、辺りが静寂に包まれる頃。

 闇に紛れて一つの影が姿を現す。

 影の名は――カテンナー。

 人々の前向きな心を食い散らかし、世界を後ろ向きにさせてしまう存在である。

 そんなカテンナーの前に立ちはだかる人影が一つ。

 フリルがふんだんに使われた可愛さを前面に押し出した服装に身を包み、縦ロールに巻かれた腰まで届く金髪の髪を揺らしながら現れたそれは、カテンナーに対して、正義の拳を振り上げたっ!!!

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 時刻は深夜2時

 月明かりの下で巨大な化け物と対峙するプリティチャーミングな存在が一つ。

 フリルがふんだんに使われた服装に身を包み、腰まで届く金色の縦ロールを揺らている存在——私、北上美香25歳、通称ミカリンである。

 そんな私は大きく息を吐き出した後、今日も今日とて理不尽に仕事を押し付ける上司を思い浮かべながら、眉間に皺を寄せ、溜まりに溜まった上司や会社への鬱憤を、足元に転がる巨大な真っ黒な人型の化け物の顔へ、一発一発憎しみを込めて拳を振り下ろす。

「ミカリン! カテンナーはもう弱り切っている! さあ、ラブリー・マジカル・ビーム♡を使うんだモン!!」

 私の横を蠅のように飛ぶテディベアは、人をイラつかせる高い声で私へと話しかける。

「毛玉ぁ、私、明日5時出社って言ったよなぁ? 今何時だ?」
「いち……いや、2時だモン」

 私はため息を吐き出し、毛玉の頭を引っ掴んだ。

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「あだだっ、つ、潰れるっ! 綿が出ちゃうモンっ!」

 毛玉は私の手によって顔を潰されながら、悲痛な声を上げる。しかし、私はそれを止めることなく、むしろその力を更に強くした。

「深夜に呼びつけておいて、なぁんで君はそんな口を利けるのかなぁ? 申し訳なさとかないのかなぁ?」

 私は掴む力を緩め、"優しい笑顔"を毛玉に向ける。しかし、"何故か"毛玉は私の笑顔に対して引きつった笑みを見せた。

「ま、魔法少女はカテンナーを倒す責任がっ―ー」
「だぁーれのせいでその責任を押し付けられているとでも?」
「そ……それは……」

 毛玉は言葉を詰まらせ、玩具みたいな眼球を左右に泳がせる。そんな煮え切らない態度の毛玉に私はため息を吐き出した。

「……ッチ、煙」
「ふぇ?」
「煙草出せって言ってんだよ」

 毛玉からオドオドとを差し出された煙草を受け取り、私は魔法少女になったあの出来事に思いを馳せた。

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