「ネクストスタート ありふれている僕の異世界物語」への投稿

東京都渋谷区のスクランブル交差点の中央にその少年は立ち尽くしている。

太陽は天頂へと昇っているにも拘わらず、かつて人に溢れていたこの地には、少年の他に人影はない。

周囲には、人の気配のないビル群が物言わずただ立ち尽くしているのみで、時折そこから顔を覗かせるのは人ならざる三つ目の化け物や宙に浮かぶ無機質な円形の何かであった。

「おいで」

そんな異形達に向かって少年は右腕を突き出し、到底届かないであろう小さな声を放つ。すると、異形の一体は少年の行動に理解を示したのか、異常な速さで少年の元へとやってくる。そして、鬼を思わせるような赤い肌を持つ人型の三つ目の異形は少年の腕へとその牙を突き立てた。しかし、少年の腕からは血が流れることなく、逆に三つ目の異形は吸い込まれるように少年の腕の中へと消えていった。

「ありがとう」

少年は、また小さく言葉を発し、不自然に赤く染まった空を仰いだ。

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赤糸マト