静かに雪は舞い降り、吐く息は凍りそうなほど白かった。
二月のイギリス。俺は学校の帰路に着いていた。
身も凍りそうなほど冷たい外気。コートのポケットに入れた手は寒さを通り越して、痛みを感じていた。そのことに対して小さな苛立ちを覚えていると……。
「お兄ちゃん」
背後で声が聞こえた。振り返れば、黒の冬物コートに身を包んだ妹がいた。マフラーに手袋と厚着をしているのにも関わらず、その鼻はまるで赤鼻のトナカイのように真っ赤だった。
「先に帰っているんじゃなかったのか?」
俺はぶっきらぼうに問いかけた。だが、妹は笑って言う。
「お兄ちゃんと一緒に帰りたかったの」
「……好きにしろ」
俺は前を向いて歩き出す。すると、妹は嬉しそうに笑いながら俺の隣を並んで歩き始めた。いつものことだ。
「お兄ちゃん。帰ったら……」
「蜂蜜入りの紅茶か?」
「ええ。うんと甘くね」