ビターメイジ
氷華の贖罪
氷華の贖罪
# ファンタジー
ビターメイジ
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血のように赤く、悪魔の笑みのように細く弧を描く繊月が私を見下ろす。
凍てつくような冬の風は妙に重苦しく、黒過ぎるほどに黒い夜空には酷薄に冴えた星々が瞬いていた。
かじかんだ手が握る古びた懐中時計は最も夜が深くなる時刻を指し示している。
眼前の石床には、ぼんやりと薄緑に発光する鉱石の粉で描いた精緻な魔法陣がある。
足元には開かれた古い魔道書。
全ての準備は完璧に整っていた。
あとは私が、覚悟を決めればいい。
息を吸って、あらかじめ暗記してあった文言を朗々と詠ずる。
「魂喰む高貴なる化生、至高にして悪辣なる御方よ!我、己の魂を対価とし大願を叶えんと欲すもの!これなるは異界への門、道は既にして繫がれり!汝等の内に慈悲深き御方あらば、誰ぞ我が呼び声に応え、地の底の異界より這い出し給え!」
刹那。魔法陣が、私の視界を白く染め抜くほどの閃光を放った。
天才君と凡人先生
天才君と凡人先生
# 異世界
ビターメイジ
2.4万
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剣と魔法の異世界といえば、急に湧いて出て好き勝手やらかす転生者が定番だ。
しかし、残念ながらこの世界には過去数十世紀に渡って転生者が存在しなかった。ファンタジーにありがちな長命種等も存在しなかったため、もはや転生者という存在自体が歴史から消え去りつつある状態だ。
しかしどんな世界にも単騎で世間を引っ掻き回す輩は存在するもので、転生者のいないこの世界ではそんな奴は現地人の中から現れる。
役立ち武器屋の体験記
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# ファンタジー
ミズノモト
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募集数
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チリンチリーン
鐘の音と共に入ってきたのは一人の少年、その小柄な体には似合わない大きな鞘を担いでいた。
「おじさん!これにピッタリはいるでっかい剣ちょうだい!」
「おじさん?30はおじさんじゃない」と怒鳴りたい気持ちを抑え、鞘の長さを図った。
"2m10cm"
一体誰がこんな長さの剣を使うんだ?あのツヴァイヘンダーでさえ180cmもない。鞘で2mということは柄を含めれば2m40は下らないだろう。重さも5kgは下らない。
「ねえ僕、これは誰が使うの?」我慢出来ずに聞いてしまった。
「マントのおにいちゃん」
そいつが怪しいやつということだけは理解した。
だがやはり人間というのは好奇心に惹かれるもの、少年にそのなんか怪しい奴に剣を直接取りに来させるということで取引が成立してしまった。
本当にこれでよかったのだろうか、、、
朝起きたら〇〇になっていた
朝起きたら〇〇になっていた
# ミステリー
かじゅさん
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鏡にうつった自分の姿を目のあたりにして、俺はたじろぐ以外に何もできなかった。
「な…ん…だと…」
昨日の夜眠りについたときには、確かに何の変哲もない22歳の男のだった。
今までだってそうだった。
朝起きたら、昨日より1日だけ歳をとったつまらない自分がスタンドミラーの中にいた。
それが何故、今朝に限ってこんな姿が鏡の中にあるというのか。
「わけが分からない…」
鏡の中には、なんと